アイスハート

あの時、凍った私の心。炉心溶融、人を愛す心はいつ溶るのか。傷だらけの一片氷心の日常。

『きみはポラリス』三浦しをん/様々な恋と愛、星が瞬く夜空から自分だけのポラリスを見つけたい。

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仕事とプライベートの変化により、生活のリズムが少々崩れておりました。

読書が進む時は、体調や心理状態が安定している時であり、現に9月は思うように本が読めませんでしたが、少しずつ読書の秋への流れに乗る事ができるようになった様子です。

さて、今年に入ってからよく読むようになった恋愛小説。三浦しをんの作品は前から気になっていたのですが、例に習って何を最初に読めばいいのだろうと悩んでいたのですが、紹介文に書かれていた最強の恋愛小説集という言葉に惹かれ、本書を手に取りました。

どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている──。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。

11色に染まる恋愛

本書には11の恋愛短編小説が収められており、連作短編集とは異なり、1つ1つ違う男女の様々な恋模様が描かれています。

男性が女性に抱く恋心、親が子に向ける愛、信仰に捧げる心、そして泥沼のような禁断の関係。読んでいて微笑ましく思う話しもあれば、私のとあるトラウマを思い出させる、少し気分の悪くなるような話しもあります。

人は何故人を好きになり、強く自分以外の誰かを求めるのか。そこへ至る経緯は決して誰もが同じ訳ではなく、それを手にする人がいれば手にする事ができなかった人もいる。一度は手にした愛が離れていったり、手放すことになったり。

恋だの愛だのと口にするには容易く、しかし、本当のそれに触れた時、言葉の通りに事が運ぶことはまずありません。それだけ、世の中には十人十色(いや、それ以上)の人間関係があり、その上に男女その他の関係があるという、当たり前過ぎる事を本書は思い出させます。

本書の指す「ポラリス」とは何か

また、解説で中村うさぎが語っているように、短編集であれば収録されている作品の1つをタイトルに付けるのが通常ですが、本書のタイトルとなっている『きみはポラリス』という作品は収録されていません。

ポラリス (Polaris) は、こぐま座α星、こぐま座で最も明るい恒星で2等星。現在の北極星である。
ポラリス (恒星) - Wikipediaより

「ポラリス」とは恒星の事であり、雑駁に言えば宇宙に眩く光る星の1つです。

短編集で様々な恋愛を見せつけて、「ポラリス」をタイトルにしてしまう辺りがニクい。「どれが本当の星なのだろう」と、思わずそんな事を考えてしまいます。一つ一つの物語がそれぞれの眩しさで光りを放っており、その眩しさの中から1番を探すのは、きっと我々読者に委ねられているのだと思います。

私も本書からひとつ「ポラリス」を見つけました。しかし、敢えてどの作品なのかは語りません。是非実際に手にして、あなただけの「ポラリス」を探してみてください。星が瞬く夜空から星座を探すよりは、きっと簡単だと思います。

【総合的な感想】最後に私が恋したのはいつだっただろう

さて、最強の恋愛小説と紹介されている本作品。

私も今年に入ってから多くの恋愛小説を読んでいます。主に純愛というか、感動できる恋愛小説を好みますが、本書を読んで感じたのは「私が最後に恋をしたのはいつだっただろう」という事です。

私も普通の男ですので当然に女性を恋愛対象としており、異性に対して好意を抱く事は決して珍しい事ではありません。しかし、好意を持つのと恋する事は別物であり、愛することもまた別物です。

後から思い起こすと、「あれはきっと恋だったのだ」と思う事はあれど、当のその時にそれを認識していたかどうかは、今になっては定かではありません。では、「今、恋をしているのか」と自分に問いかけると、その答えは否(いな)です。

来年に30歳を迎える今となっては、恋だの愛だの、恥ずかしげもなく言えるような年齢ではもはやないと自覚しています。しかし、物語のような恋じゃなくても良い、私だけの「ポラリス」が見つかる日が、いつか来ると信じたいです。

きみはポラリス (新潮文庫)

きみはポラリス (新潮文庫)

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