アイスハート

一片氷心で四季を巡る書斎ブログ

読書/書評-小説

『コンビニ人間』村田沙耶香/社会不適合者は不幸なのか?普通であることは幸福なのか?

私は大学1年の夏休み中と4年生に1年弱ほどコンビニのアルバイト経験がありますが、時給が安い割に多くのサービスを提供しなければならず、土地柄めんどうな客も多かった事もあって、多くの意味で大変なアルバイトです。 また、働く人も多種多様でした。事…

『旅猫リポート』有川浩/人と猫の関係を超えた絆の旅

旅をしました。 先日、福島県へ仕事の都合で出張をしたついでに2泊3日(出張も含めると3泊4日)の旅です。 予定の1つとして磐梯熱海の温泉宿にゆっくり泊まって、久しぶりに好きなだけ小説でも読もうかと計画をしていたのですが、うっかり持っていく予…

『夜行』森見登美彦/鞍馬の火祭の夜に消えた彼女と、銅版画にまつわる数奇な物語

これまでに『四畳半神話大系』、『夜は短し歩けよ乙女』など数作品を読み、すでに森見登美彦の大ファンです。 2016年はなかなか読書に時間を割く事ができず、あまり小説を読むことができませんでしたが、ずっと書店で平積みにされている本作品が気になっ…

『君にさよならを言わない2』七月隆文/待望の切なくて暖かい感動する連作短編集の続編

続編を所望しつつ書評記事の筆を置いた前作ですが、書店を徘徊していたところ続編が発売されていました。 といっても初版が8月ですので、かれこれこの記事を書いている時点で4ヶ月が経過している事になります。 同時に、前作の書評記事を書いたのが1年以…

『また、同じ夢を見ていた』住野よる/幸せとは何か、もう一度考えよう。

諸事情あって、ブログの更新も読書の継続もしばらく出来ていませんでした。 そんな私がもう一度読書を再開するきっかけとなったのが、本書『また、同じ夢を見ていた』です。 著者の住野よるの作品は、処女作である『君の膵臓をたべたい』を読んで以来大ファ…

『ちょっと今から仕事やめてくる』北川恵海/仕事が憂鬱になった時に読みたい、社会で生きることの意味を知る小説

2009年4月、満を持して大学を卒業した私は、とある企業に就職しました。 諸々の事情が有り、急遽就職活動を開始した私にとっては就職活動そのものに非常に苦しみ、それなりに苦労してやっと得られた内定でした。 「これから約40年この企業で働き、い…

『君にさよならを言わない』七月隆文/切なくも温かい涙が頬を伝う、感動の連作短編集

あまり新刊の本は買わない方ですが、先日、買い物に出かけた際に初めて訪れた本屋さんで時間つぶしをしていた際に目に入ったのが、本書『君にさよならを言わない』です。 『僕は明日、昨日の君とデートをする』で期待が寄せられた七月隆文の第2作目です。 …

『原発ホワイトアウト』若杉冽/電力事業にまつわる内情を語る小説形式の告発本

2011年3月11日。日本に未曾有の危機をもたらした、東日本大震災。 その地震の揺れは、当時私が住んでいた三重県にまで及びました。ゆっくり動く赤べこの様にふらふらと、まるで突然高熱を発した時のような感覚に陥り、天井を見上げるとそれぞれのデス…

『乳と卵』川上未映子/男には分からない女性の側面を綴る文芸作品

どちらかというと大衆文芸を好んで読むのですが、古書店をぶらついていた時にふと目に飛び込み買ったのが本書『乳と卵』。 男性作家の作品の方が好きな傾向にありますが、今年に入ってからは女流作家の作品も少なからず手に取るようになりました。 川上未映…

『吉祥寺の朝比奈くん』中田永一(乙一)/ちょっぴりホロ苦な青春恋愛短編集

既に著者である本人も公認している話ですが、中田永一は鬼才の現代作家・乙一の別名義です。 本書を購入したのは、実は今から3年以上前の事です。その頃の私は、プライベートな事情で精神的に参っていて、本の中へ逃げ込みたい思いで手に取った事をよく覚え…

『天使の囀り』貴志祐介/何かに支配される事の恐怖を描くホラー小説

貴志祐介は私の最も好きな作家のうちの一人で、今年に入ってから『新世界より』に引き続き2作品目として手に取った作品が、本書『天使の囀り』です。 『新世界より』は単行本にして3冊に渡る超長編のSF作品でしたが、本書はかつて読んだ『クリムゾンの迷…

『きみはポラリス』三浦しをん/様々な恋と愛、星が瞬く夜空から自分だけのポラリスを見つけたい。

仕事とプライベートの変化により、生活のリズムが少々崩れておりました。 読書が進む時は、体調や心理状態が安定している時であり、現に9月は思うように本が読めませんでしたが、少しずつ読書の秋への流れに乗る事ができるようになった様子です。 さて、今…

『はじめての文学』宮本輝/二度と戻らない少年・青春時代の思い出

『私が青春を共にしたおすすめの小説ランキング50』でも紹介している『はじめての文学』シリーズ。(そちらでは村上春樹の作品を紹介しました。) 単行本で刊行されているため、文庫本と比較して割合ではありますが、絶妙なサイズ感で小学校の頃に手にした…

『四畳半神話大系』森見登美彦/ボロアパートに住まう若者の畳の並行世界

気に入った作者を見つけては、その作者の他作品を読み漁ってしまう癖があるため、なるべく多くの作者の本を選ぶことを誓った昨今。 『夜は短し、歩けよ乙女』では森見登美彦という小説家から大きな衝撃を受けました。 そして、結局他作品も是非読んでみたい…

『ストロボ』真保裕一/活字の写真で振り返る一流カメラマンの過去と未来

以前勤めていた会社の上司と、おすすめの本や読書について意見交換をする際、ひょんな事から話題になった真保裕一。 元上司曰く、山岳小説が好きだと言うことで、青春を共にした小説ランキングベスト50でも紹介している、真保裕一の『ホワイトアウト』が好…

『君の膵臓をたべたい』住野よる/タイトルの意味を知る時、号泣する

何か心境に変化があったとかそういう事は特にないのですが、今年に入ってから、恋愛小説をよく読むようになりました。 今回読んだのは、住野よる『君の膵臓をたべたい』。本作品は恋愛小説として取り扱っていい物か分かりません。高校生ならではの青春も感じ…

『凶気の桜』ヒキタクニオ/怒りを暴力でしか表現できない若者達

随分昔にマンションから飛び降りて入院した俳優、窪塚洋介が主演した映画の原作が本書『凶気の桜』(映画も同様のタイトル)。 映画版自体はまともに観賞したことがありませんが、何となくVシネマ的暴力に満ちた作品だったように記憶しています。高校の頃の…

『まひるの月を追いかけて』恩田陸/次々に仕掛けられる嘘と眼下に広がる奈良の地

3ヶ月に1度くらい、一人暮らしをしている神奈川県の自宅から三重県の実家へ帰省しています。 実家には小学校の頃から買い集めていた本が平積みで部屋の壁際に積まれており、そういえばこんな本も読んだなぁとよく眺めるものです。 その際、恩田陸の『夜の…

『その日のまえに』重松清/人はなぜ生まれ、なぜ死ぬのだろう

今年の始めごろ父が亡くなり、漠然とした喪失感から読んだ重松清の『きみ去りしのち』では号泣させられました。 半年毎くらいに、前の会社の読書家である知り合いと飲みに行く機会があり、よく最近読んだ良かった本について語り交わします。その際に私は『き…

『幻想郵便局』堀川アサコ/失ったなりたい自分になれましたか?

大学生の頃、タワーレコードに行ってはよくCDのジャケ買いをしていました。今はほとんど音楽は聴かなくなり、それに伴いレコード屋さんへ足を運ぶことも年に数回程度しかありません。 ただ、大量販売の大型ブックセンターからひっそりと町に佇む古書店まで…

『潮騒』三島由紀夫/波打ち際に感じる官能的で繊細な海の音色

近ごろあまり小説を読まない友人から、三島由紀夫の小説をゴリ押しされています。 三島由紀夫といえば戦後の日本を代表する文豪で、私もずっと読みたいと思っており、今年に入って彼のエッセイ『不道徳教育講座』で衝撃を受けたところでした。 三島由紀夫も…

『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦/古風で摩訶不思議な可愛い喜劇の恋愛小説

「命短し恋せよ乙女」での歌詞で有名な、大正時代の歌謡曲『ゴンドラの唄』のオマージュのような作品目。 他にも派生したと思われる類似したフレーズは世の中には沢山ありますし、実際に人の口からも即興で作ったようなオマージュを聴いたことがあります。 …

『青が散る』宮本輝/輝かしく儚い青春の日々を思い出す小説

自分で読みたい小説を探すことも好きですが、人からおすすめされた小説を読むことも好きです。 本作品『青が散る』ですが、恥ずかしながら宮本輝の小説を読むのは初めてです。 先日、会社の宴の場にて気の合う上席が『流転の海』(宮本輝)を話題にして語り…

『ツナグ』辻村深月/死者と1度だけ会えるなら誰を選びますか?

作品数も多いのに、なかなか古書店で安価で手に入れることのできなかった辻村深月の作品。 先日、実家に帰省した際にやっと1冊手にすることが出来ました。 ミステリ小説をよく読む私にとって、小説における人の死はほぼ必ずある物ですが、本作品は死者との…

『パイロットフィッシュ』大崎善生/人が生み出す記憶と感情の永遠

私が小学生くらいだった頃、今は亡くなってしまった父が90センチもの大きな水槽をリビングに置き、色とりどりの熱帯魚と、貪欲に生い茂る水草たちを管理していた日々を思い出します。 形から入る私はそんな父の姿を見よう見まねして、小さな水槽でアクアリ…

『旅のラゴス』筒井康隆/終わらない不思議な旅の人生とロマン

最近、他のブロガーさんの間でもよく話題になっている『旅のラゴス』。 読んだ本の記録のため、読書メーターを利用しているのですが、そこでもチラチラとオススメの本として紹介されていたため、ずっと気になっていました。 私がよくお世話になっている古書…

『植物図鑑』有川浩/不覚にも泣いた道草恋愛小説

私は植物が大好きで、中でも観葉植物はアマチュアながらもその道20年になります。 その影響は、田舎で育った母と父の影響が非常に大きく、家にも数多くの植物図鑑がありました。幼い頃より、特撮ものの怪獣図鑑よりも、植物図鑑を読みあさる私の姿は両親の…

『暗黒女子』秋吉理香子/花園の女子高を舞台とした1人の少女の死とは

不気味な装丁。目を合わせると何だか不安になる少女の佇まい。 私は10代の頃に乙一の作品を読み漁っていた読書体験から、本書『暗黒女子』は乙一の『GOTH』が再来したような感覚をずっと肌で感じていました。 しかし、単行本の新刊は高いので敬遠して…

『告白』湊かなえ/母なる狂気と深い闇の結末

湊かなえの作品は本屋さんで平積みされているのが目立ち、前々から1冊読みたいとずっと思っていました。 作風が分からなかっただけに、最初の1冊はどうやって選ぼうか迷っていたのですが、古書店でたまたま見かけた本書を読むことにしました。 評価が真っ…

『サクリファイス』近藤史恵/自転車初心者も読みたいロードレースミステリ

最近、少年チャンピオンで連載されている『弱虫ペダル』から、競技用自転車への関心が高まっているようです。 きっかけは貴志祐介の『青の炎』でしたが、私もロードバイクに乗っており、ロードレースをテーマにしたミステリということで、前々から読みたいと…

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